東京高等裁判所 昭和48年(ネ)2507号 判決
2 以上認定事実によれば、控訴人とA男が情交関係を結ぶ以前から被控訴人とA男との夫妻仲は不和であり、挙句の果、離婚の調停を申し立てたりする関係にあったものの、未だ完全な破綻の状態にあったとは認められないところ、控訴人は、A男に被控訴人である妻のあることを知りながら、A男と情交関係を結び、それを継続したものであるから、控訴人は、A男と共同して同人の被控訴人に対する守操義務に違反する行為をなしたものというべく、これにより被控訴人の蒙った精神的苦痛に対し慰藉料を支払う義務があるものといわなければならない。
三、そこで慰藉料の額について判断する。
控訴人は、A男と情交関係を結ぶにあたり、A男を誘惑したとか、積極的にA男の守操義務違反に加担したものと認められる証拠はなく、むしろ前記のとおり妻をあきたらず思っていたA男の方が積極的に控訴人に接近して親密さを増すようになったとみられるのであって、それにもかかわらず、慰藉料の請求については、被控訴人は、A男を相手どることは当初から考えておらないのであり、そして、前記認定事実によれば、A男が控訴人に接近するようになったことについては、被控訴人に責任が少ないとはいえないこと、また、A男は、正典を被控訴人に渡すことに意を決しきれず、ついに同人を道連れに自殺したこと、≪証拠≫によれば、被控訴人は、控訴人に教えられた和文タイプにより月収七万円程度を得ているのに対し、控訴人は、月収三万円程度で、A男との事業による借金一三五万円を抱えていることが認められること、その他本件にあらわれた諸般の事状を斟酌すれば、被控訴人の精神上の苦痛は、一〇万円をもって慰藉するのが相当である。
(豊水 小林定 野田)